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斉藤松雄

標茶町出身、釧路市在住

1962年生まれ。塘路小中学校、弟子屈高校卒業。
地元塘路でカヌーのインストラクターとしてアルバイトをした経験がカヌーに関わる仕事を始めるきっかけとなる。
2005年に個人事業として釧路マーシュ&リバーを起業、2008年に株式会社化した。
釧路川カヌーネットワークや釧路湿原再生協議会、北海道体験観光推進協議会などの団体にも所属し、自然と観光の共生を目指している。
釧路湿原とカヌーをこよなく愛するアウトドアガイドである。
この記事を書いた人
hinakoひなこ。一昨年、大学進学を機に青森から釧路にやってきた20歳です。
雪国育ちですが、釧路のしばれる寒さにはまだまだ慣れません…
最近、クスろに参加し始めたばかりです!
初めてのライターのお仕事、緊張しながらの取材と執筆でした!

釧路観光の目玉スポットといえば、釧路湿原だろう。
釧路湿原は、タンチョウやエゾジカ、シマリス、オジロワシなど多くの動物が生息する日本最大の湿原である。
釧路湿原の自然を守りながら、その美しい姿を間近で見ることのできるカヌーツーリングを行っている
釧路マーシュ&リバーさん(マシュリバさん)を取材した。

自然に溶け込むことができる、そんなカヌーの魅力とは…!?

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hinako

こんにちは!今日は取材よろしくお願いします!
斉藤さん!あの、マーシュ&リバーさんのこと、マシュリバさんって呼んでもいいですか?

saito

いいですよ〜。私たちスタッフもそう呼んでいます。

hinako

ありがとうございます!
では斉藤さん、さっそく質問なのですが、マシュリバさんはどのような会社なのでしょうか?

saito

簡単に言うとアウトドアガイド会社です。
旅行で釧路湿原を訪れた方々をカヌーに乗せてガイドをしています。

hinako

カヌーを使っているんですね!でも、どうしてカヌーなんですか?

saito

湿原はぬかるんでいるため徒歩では入ることは難しいし、国立公園のため、規制区分があり、
人の足で踏み入ることのできない場所なのです。
カヌーは釧路川を下りながら湿原を間近に見られるため、カヌーを使ってお客様をガイドしています。

※釧路湿原国立公園』は国立公園に指定され、自然環境の保護や適正な公園利用を図るため地区ごとに公園計画が定められてる。
「特別保護地区」への立ち入りは禁止され、許可なくカヌーで入っていけるのは「特別地域」「普通地域」。
一部民有地であるため、所有者への確認が必要な場合もある。

hinako

釧路湿原で自然を深く体感するためなんですね。釧路湿原でカヌーを行う魅力って何ですか?

saito

魅力ですか…都会から来たお客様の話を聞くと、釧路湿原でカヌーを体験すると、
何か今まで悩んでたことが、どーでもよくなったり、人生観が変わった
って聞いた事があります。

hinako

え?どういうことですか!?

saito

釧路湿原の力かな。たぶん、言葉で言ってもわかりにくいので、実際、乗ってもらうとわかると思います。
年齢的に20代後半くらいになってくると、もっと分かってくるのかもしれませんね。

hinako

深いですね…

saito

なんていうか、自然の中に溶け込むことで癒されますが、修学旅行で訪れる高校生位の年齢だと、
カヌーをたくさん漕いで速さを競争することが楽しみのようなので、
大人の感じ方とは少し違うのかもしれませんね。
ひなこちゃんはそうだね…あと10年したらわかると思うよ笑

hinako

10年…まだまだですね…

saito

学生から社会人になり、揉まれたらわかるから大丈夫大丈夫。
お客様が感想を書き込める「旅のあとがき」という掲示板も作っています。

hinako

ふんふん…「静けさに癒された」「ホッとした」「ゆったりできた」などの書き込みがありますね。
スタッフの皆さんの丁寧なサービスに感動されている声も多いです。

saito

スタッフはみんな一生懸命釧路湿原をガイドしてくれます。
お客様がリラックスできる雰囲気作りを大切にしていますし、釧路全般の情報も伝えながらガイドしてくれているので、体験が終了し、事務所に帰ってきた時は、スタッフとお客様はすっかり打ち解けているんです。

hinako

釧路の案内もしてくれるんですね!

saito

カヌー後のオススメのお店や、釧路の名物を紹介したりもしています。
釧路のお店や施設と連携し、お土産や食事を値引きするクーポンも置いています。
カヌーに乗ったお客様が、釧路の美味しいものを食べ歩き、釧路をたくさん知っていただき、
また釧路に来たいと思ってもらえるよう、いろいろ考えながらやっています。

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釧路近郊のお店や施設とのコラボで独自につくったクーポン
hinako

マシュリバさんからのお客さんがくれば、釧路の他のお店も嬉しいですよね。

saito

そういう繋がりをもっともっとつくりたいですね。
「親戚に会いに釧路にくる」ていう感じが理想ですね。
マシュリバや、オススメした店で、お客様が関わった釧路の人といい繋がりを持てば、どんどん釧路を好きになって行くと思います。
そうすると、またあそこのお店の人、マシュリバのあのガイドに会いに行こう!とリピートしてくれると思うんです。

hinako

なるほど。素敵なお考えですね。
そんな斉藤さんの一日のお仕事は、どんな感じなんでしょうか?

saito

夏場は朝一カヌーがあるから5時、冬場は8時に出勤して、準備や送迎、カヌーガイド、
それが終わると夕方どっさりきているメールの返信をスタッフと手分けしてやっています。
帰るのが7、8時ですかね〜

hinako

わぁ!超ハードですね。
特に夏は、あまり寝れないですね…

saito

意識してきちんと寝るようにしています。
睡眠不足で体力や集中力がなくなると、お客様を安全にガイドすることができませんので。
帰宅後はすぐ風呂に入り、ビールを飲みながらご飯を食べ、食べ終わったらすぐ布団に入ります。
特に忙しい夏場だけは、何年か前までは瘦せていたんですが、今は夏も痩せません。
ということは、まだまだ余裕があるのかな笑

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事務所の前には湿原が広がる(左)、カヌーは丁寧に手入れをし、雨風にさらされるのを防ぐためにテント内で保管(右)

「自分だったらこうやりたい」その想いから生まれたマーシュ&リバー

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hinako

斉藤さんが起業したきっかけってなんだったんですか?

saito

まず 釧路湿原 生まれですからね。

hinako

え?湿原生まれですか笑

saito

そうそう。子どものころからよく釧路湿原で、遊んでいました。
今の時代だったら行くな!って言われるところも結構行きました。
また子供ながらいろんな経験もしました笑
薄氷の張った湖に落ちて、あまりの冷たさに、一瞬呼吸ができなかったこともありましたね。

hinako

だいぶやんちゃだったんですね。
子どもの頃の釧路湿原で遊んだ経験が今に繋がっているんですね!

saito

そうかもしれないですね〜。
その遊びという冒険のおかげで、何が危ないかの基準もわかるんです。

hinako

なるほど…

saito

社会人になった後にカヌーガイドのアルバイトをする機会があったのですが、その当時のカヌーガイドは、
安全にお客様にカヌーに乗っていただくという事は、今でもいい経験をさせてもらったと思っています。
ただ、再び釧路湿原に訪れていただけるようなガイドスタイルがまだ確立されていなかったと思います。

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釧路川にカヌーが滑り出すスタート地点、細岡カヌーポート
hinako

最初の頃はそうだったんですね。

saito

そうです。アルバイトでカヌーガイドをしているうちに、
自分だったらこんなやり方でお客様をガイドしたいなっていう欲が出てきて、
「それなら自分のスタイルでやっちゃおう!」ってできたのがこの会社。
再び釧路湿原に訪れたいと思えるようなツアー作りを心がけています。

hinako

そうだったんですね。
そういえば、冬にカヌーをやる会社ってあんまり聞かないですよね?

saito

季節もそうですし、時間帯によりコースを作り、同じ経路を通っても、
朝一と午後では太陽の位置により、見える景色が全然違うので、
リピートしてくれるお客様にもいろんな景色を楽しんでもらってます。

hinako

なるほど~!
同じ経路でも、季節や時間帯によって新しいものとして楽しむことができるんですね!

saito

たとえば冬のコースでは、夏に見ることができない「霧氷や流れるはすの葉氷」や
「冬の野生動物の様子」とか冬でしか見られない釧路湿原の自然をみることができます。

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夏カヌーは生い茂る緑の中を進む(左)、ドライスーツを着て釧路川を進む冬カヌー(右)

湿原との共生を目指したツアー作り

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hinako

マシュリバさんには、斉藤さんの他にスタッフは何名いらっしゃるのですか?

saito

今は5人ですね。

hinako

スタッフさんに向けて組織づくりの上で大切にしていることってありますか?

saito

それはもう、安全面ですね。
会社として運航規定を定めて、スタッフに周知しガイドしてもらっています。

hinako

会社の規定っていうのは、マシュリバさん独自のものなんですか?

saito

そうです。安全面に加えて、環境や野生の動植物にも配慮した規定にしています。
もちろん「タンチョウが川岸にいたら、静かに離れて通過すること」とか。

hinako

環境面も大切にされているんですね。

saito

環境面に関しては、いろんな考え方があると思うんだけど…

hinako

と言いますと?

saito

カヌーに乗りながら釧路湿原の自然を体感することは、タンチョウなど野生動物がカヌーに反応してしまうから、
良くないと思っている方もいます。

hinako

釧路湿原の中に人間が入ることは、どうしても難しいんですね。

saito

これは僕の考え方なんだけど、人間も自然界の一部です。
ルールを遵守し、自然や野生動物に最大限配慮しながら楽しむ事は許されるのかな…
と思っています。

hinako

なるほど。
人それぞれの考え方がありますよね。

saito

僕らガイドは、そのような考え方もあるということを常に心に留め、
ガイドしていかなければならないと考えています。

hinako

ガイドに野生動物が反応しにくい工夫も取り入れているんですね。

saito

そうです。
野生生物の反応を少なくさせるノウハウはうちのガイドたちと共有しています。

hinako

ガイドのみなさんと一緒に信頼向上を目指しているんですね。

saito

そうですね。

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静かにカヌーが横切ると、警戒せず飛び立たない野生のタンチョウ(左)と、エゾシカ(右)
hinako

マシュリバさんって他社と比べてガイドの方が多いなって思いました。
正社員の方もいらっしゃいますし。

saito

自分一人では、今来ていただいているお客様全員をガイドすることは出来ません。
また、冬場のお客様も少しずつ増えてきたので、スタッフが必要なんです。

hinako

最近だと外国人観光客も増えているんじゃないですか?

saito

増えてきています。ガイドを増員し、語学をもっと勉強し、対応する方向性もあるかもしれませんが、
環境への負荷がもっと大きくなりすぎてしまう危険性もあるし、
僕ら運営する側のバランスも崩れちゃうと思うので、今くらいの規模がちょうどいいのかもしれませんね。

hinako

そうなんですね。

saito

もちろんこれで良いって意味じゃなくて、きちんとした目標を持ち進化を目指しますが、
あまり無理しすぎないように目指そうと思ってます。体が資本ですので…笑

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グループ旅行プランでは団体の外国人観光客が訪れることも
hinako

今、目標の話があったと思うんですけど、今持たれてる目標について教えてもらえますか?

saito

たくさんお金があれば、湿原の周りの山とか民有地を購入し木を植え、
湿原に流れだす土砂を防いだりすることはできると思うんですけどね。

hinako

湿原の保護を目指したいということでしょうか?

saito

そうですね。
ただ実際に僕らができることは、お客様に湿原の事、現状について伝えることなんです。
国立公園の自然を利用させてもらいつつ、保護することの重要性を伝えるってことが
僕らの仕事の一つだと思っています。

hinako

使命感や責任感を感じます!

saito

普段はお腹が空くと機嫌が悪くなる子どもみたいな人間なんだけどね笑

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カヌーツアー後に出してくれる淹れたてのコーヒー(左)毎年欠かさないパドルのヤスリがけとニスの塗り直し作業(右)

釧路湿原は体感しなきゃその魅力を語りきれない!

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hinako

マシュリバさんでは、釧路在住の方々にカヌーを体験してもらう取り組みをされていると伺ったのですが?

saito

実は、釧路在住の人たちが地元に関する一般的なことをあまり知らないんだなあって思ったことがあって。
例えば、釧路湿原が一望できる細岡展望台に一度も行ったことがないとか。
釧路には釧路湿原っていう魅力的な場所があるので、湿原の良いところをもっと知ってもらいたいと思ったんです。
それで、年に2回釧路在住の人向けに「地元再発見」という特別価格のツアーを組んだんです。

hinako

地元再発見ですか!

saito

まだまだ釧路でカヌーができること自体を知らない方もいると思うので、是非体験をしてもらいたいです。
観光で釧路に遊びにきた人に湿原のことを説明したり、
カヌーでの湿原散策をお勧めしてもらいたいと思ってやっています。
そういう意味ではホテルに勤めている方や、バスガイドさんにも体験してもらいたいですね。

hinako

確かに、観光業に関わる人たちに来てもらいたいですよね。

saito

要は、釧路に来ていただくお客様と一番接する方に、湿原のことをもっと知ってもらいたいんです。
地元向けの再発見ツアーですので、口コミで宣伝していただいてます。
また、FMくしろさんにも情報発信をお願いしてたりもしています。

hinako

実際に体験することで、その良さをもっと伝えられるようになるはずですもんね!

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地元再発見ツアーに参加した釧路在住のみなさん

釧路にはこんなにも偉大で素晴らしい釧路湿原がある。その素晴らしさを伝え続けている斉藤さん。
幼少期からこれまで湿原に関わり続けてきた斉藤さんだからこそ、伝えられる釧路湿原の雄大さや偉大さがある。
癒しを求めて釧路湿原を訪れて欲しい。

斉藤さんと出会うには?
株式会社 釧路マーシュ&リバー(釧路川カヌーネットワーク事務局)
北海道釧路郡釧路町河畔4-79
0154-23-7116
HP:http://www.946river.com/
E-mail:canoe@946river.com

斉藤さんに会える!『ひとめぐりTOUR vol.3』
普段クスろ人のインタビュー記事をご覧の皆様の中には、そんな素敵なクスろ人の方々に実際に会って話してみたいな〜と思った方もいらっしゃるのでは?
そんな方々へ向けて、クスろ人に実際に会いに行ける「ひと」めぐりTOURという1泊2日の旅を開催しています。
斉藤さんにも熱く釧路川をカヌーガイドしていただく予定です!
http://kusuro.com/tour_03/
※1/24をもって参加申し込みは締め切りました。

ひなこの編集後記
hinakoドライスーツの写真を撮っていたら、着てみる?と言われたので早速ドライスーツを試着させていただきました!
「髪のピン取って!足出して!はい、いくよ!」と手際よく指示を出しながら、あっという間に着せてくださった斉藤さんはまるで本当のお父さんのようでした。
これを着ないと、冬の釧路川に落っこちたら笑えないみたいですよ。
カチーン。