2017年01月24日
民間と行政、両方の感覚を持ち合わせる頑張りくん
天内武範
釧路市出身、阿寒湖温泉在住
公務員と市民活動家という2つの視点を生かし、多くのまちづくりに関わるプロジェクトを生み出した企画マンでもある。
2016年から阿寒湖まりむ館にある阿寒観光振興課に着任し、現在は単身赴任中。
アウトドアとワインが好き。
クスろ副代表ちーやん。
クスろのWEBやデザインを担当。2016年夏に釧路にUターン。
10年ぶりに過ごす釧路の冬は寒さにビビり、凍結にビビり、晴れの日の多さにビビっています。
阿寒国立公園は、原始的な姿そのままの自然とともに生活をしてきたアイヌ民族の文化が息づいている。
また、温泉街や阿寒湖周辺のレジャースポットの豊富さから、観光地としても全国的に注目を浴びている。
阿寒湖にほど近い阿寒湖まりむ館にある釧路市阿寒観光振興課で、日々国内外の観光客に向けた観光施策に取り組んでいる職員の中に、
なにやら変わった経歴の持ち主がいるという。
内部管理から外部連携まで、幅広く役所を駆け回って17年
こんにちは〜今日はよろしくお願いします。
こちら、お土産のまりも羊羹です!さっきそこのお店で買って来ました。
あ、どうも天内です。よろしくお願いします。
おぉ、北海まりも製菓さんのですね、好きですこれ。全部一人で食べます。
(ん、細身なのに大食いなのか!?)
天内さんが変わった経歴の持ち主という話を聞いたのですが、どのような経歴なんでしょう??
うーん。市役所の中だけで見るとそんなに変わってるとも言えないんだけど、でも色々やってきてはいるよ。
2000年入庁で、もう17年目だからね。
部署異動もけっこうあったんですか?
最初は総務部行政総合調整室に3年。
そこでは職員の研修のカリキュラム作りや行政改革なんかをしてたよ。
堅そうだけど、研修講師の選定や行政運営の新しい仕組みの提案とかもできて、けっこう自由にさせてもらえたね。
ほうほう、そのあとは?
次に移ったのが財政課。ここは7年いたね。
予算作りや予算の執行管理をやってる部署で、数字を見比べたり細かい作業が多くてね。
ちまちました作業は性にはあってたんだけど、とにかく肩こりがすごかったよ笑
ひぇぇ、肩こり…でもそういうの私のイメージする公務員って感じです(偏見ですいません)
あはは笑
次に配属されたのが釧路公立大学の地域経済研究センター。
当時学長でセンター長だった小磯修二先生のもとでの仕事だったのでとても勉強になったよ。
いろいろな研究会や、いろいろなフォーラムに携わったね。
小磯先生のまわりに集まってくるまちづくりのカギとなるほかの地域や民間企業の人とのつながりも増えて、
これまでの仕事内容とは一変したよ。
特にどのへんが変わりましたか?
外の人と交流することが増えたから、民間企業の感覚を知れたんだよね。
民間の仕事の仕方やスピード感、これを知れたのは大きかった。
それまではずっと市役所内の内部管理部門にしかいなかったからね。
おぉ、それはこれまでと180度ころっと変わった感じですね。
考え方も大きく変わったよ。
公立大学にいく前は行革部門や財政部門にいたから、どちらかというと「節約志向」だった。
予算は絞って絞って最小限にって。
それが公立大でいろいろとやっていくうちに、まちが発展していくには投資が必要っていう考えが出てきたんだ。
地方自治法でいう「最少の経費で最大の効果を」だね。
釧路市ではこのことを「都市経営」って言っているんだ。
そのあとに、ずばりその名称がついた都市経営課という部署に異動して、企画に携わるようになったから、
自分としてはいい流れだったなぁって思ってるよ。
都市経営課ではどんなことをしていたんですか?
都市経営課は「まちづくり全体を見る場所」で、まちに関わるいろんな企画を考えたね。
ゼミ合宿誘致をしたり、釧路を舞台にした少女漫画「9(ナイン)~キミがいる街で恋をした~」の制作のお手伝いをしたり、釧路の観光情報やオススメ情報を集約した釧路シティプロモーションのWEBサイトも作ったね。
あと、釧路の企業の事業資金を釧路市民・全国の人からインターネット上で出資してもらうという
「くしろ応援ファンド」も立ち上げたよ。
こう見るとけっこうやったな〜
今の阿寒観光振興課に移ったのはいつからですか?
2016年の4月からだから、まだまだペーペーだね笑
同じ釧路市内でも、市役所と阿寒湖だと車で1時間半くらいかかると思うんですが、
これまでの生活と変化はありましたか?
阿寒はいい町だよ〜ずっと住みたいね。もう温泉最高!住んでみてあらためて魅力に気付いてるよ。
日々気づいた魅力は、facebookやインスタグラムで紹介しているよ。
でも単身赴任だから、弁当作りに洗濯などいろいろ大変なところもあるよ。
仕事に関しては、今までとは大きく違って、観光の最前線で「どう観光客にきてもらうか」について
日々考えてるんだよ。
この中で、これまでと同じようになにかおもしろいことをやりたい!っていう気持ちは、もちろん持ち続けてるよ。
まちづくりへの考え方も性格までもがつくられた学生時代
まちづくりに興味を持ち始めたのはいつ頃だったんですか?
大学の時に「社会教育ゼミ」に興味を持って、そこからかな。
そのゼミでは、「まちづくり」がテーマだったんだ。
最初、まちづくりと聞いてジオラマでも作ってミニチュアの建物とかをそこに配置していくのかなと思ってたんだけど、実は「ひとづくり」なんだって知って、おもしろいな〜って。
それでそのゼミに入ったんですね?
うん。公務員志望だったから仕事にも役立つだろうし、当時NPO法(特定非営利活動促進法)※ができて
ボランティアとかNPOに興味を持ち始めた時期でもあったんだ。
まちづくり的なボランティアに参加したいって思っていたから、タイミングもよかったんだよね。
※1998年に成立した特定非営利活動を行う団体が簡単に法人格を取れるようにした仕組み
ゼミではどんな研究をしていたんですか?
「博物館における郷土愛の形成」がテーマで、
「博物館がまちへの愛着形成にどうかかわるか」について研究してたよ。
博物館や美術館の役割の一つに、まちの魅力を発信して、まちを好きになってもらうことがあると思っていたから、博物館や美術館でボランティアしてる人にくっついてヒアリングしたり、アンケートとったりしてたんだ。
実はこの考え方は、今のまちづくりのトレンドに通じる部分があるんだ。
なるほど。今の天内さんのベースは大学時代に作られたんですね。
そうそう。今の性格もね、大学時代っていうか浪人時代に作られたものでさ。
え、性格まで!?
高校まではおとなしい方で積極的な性格ではなかったんだよね。
何がきっかけでいまのフレンドリーキャラになられたんですか!?
浪人の時にチャラッチャラしたグループがいてさ、俺は当時「絶対今年は受かってやる」ってつもりだったから、
なんだよこいつら…くらいで見てたんだけど、ひょんなことから仲良くなって。
そこから天内さんもチャラチャラしたわけですか?
いや、チャラチャラはしなかったけどね笑
ふざけたこともできるようになって、人生の楽しみ方を教えてもらった気がするよ。
今でも仲がいいし、釧路にも何度もきてもらってるよ。
あ、あの…写真が金髪なんですが…
そ、それはもう公務員になるから、大学の卒業式は最初で最後の金髪にって…
まぁどっちにしてもハジけてたね〜もう奴らの影響をモロに受けた後だからね笑
素敵な仲間と出会えたんですね〜〜
でもね浪人時代、奴らは影で俺のことを「一番前の席で授業受けてたから」って
頑張りくん って呼んでたんだって…
ぶーーーーー!!!頑張りくん!!!いいですね!!
さぁまだまだ行きましょう、頑張りくん!!!
(オイ、コラ)
もう一つの顔「シクロの天内さん」
天内さんの市民活動についておしえていただけますか?
社会人1年目の時に、ベトナムの映画でシクロっていう人力タクシーがあるのを知って、
「クシロ」と「シクロ」で何かできないかって思ったんだよね。
それを市役所の破天荒な先輩に話したら「やってみよう!」ってなって、気づけばリーダーになってたんだ笑
そんなきっかけだったんですね!
本場のシクロを輸入することをまず考えたんだけど輸送費が高過ぎたから、自分たちで作ろう!って決めて、
釧路高専の先生と釧路工業技術センターの研究員、釧路コールマインの社員や
ベトナム研修生の通訳の方々に手伝ってもらって作ったんだよ。
シクロではどんなサービスをしていたんですか?
主に観光ガイドだね。
市内のホテルと提携して、観光客向けに30分の早朝散歩をやってたよ。あとはイベントにも出展していたね。
自分だけじゃできないから、シクロを作ってくれた方や大学生、一般公募で集まってくれた方々に
ボランティアスタッフで入ってもらって運営していたよ。
出勤前に一仕事してたんですね!?
そうだね。職場と家庭の理解もあったから、結局10年以上続けることができたよ。
今はもうやってないんですか?(シクロ乗りたい…)
都市経営課に移ってからバタバタしてあまりできなくなっちゃって、今はちょっとお休み中なんだよね。
でも長くやってた甲斐もあって、市民の中には「天内」って聞くと
「市役所の天内さん」より先に「シクロの天内さん」が出てくる方もいるんだ。
これってすごい嬉しいことなんだよね。
市役所の仕事と市民活動が良い循環を生み出す
市民活動はシクロのほかにもされてたんですか?
公立大学時代に知り合った釧路教育大の先生や弁護士さんたちと市民出資で太陽光の発電所をつくる
「くしろソーシャルデザインネットーワーク」や、釧路港に入るクルーズ船の乗客、
特に外国人観光客をもてなすための「釧路ヨウコソプロジェクト」の立ち上げに関わったよ。
たしか、クスろ代表の夏堀とはこのヨウコソプロジェクトで知り合ったんですよね。
そうなんだよ!
夏堀さんと漢字入りのTシャツを売ったり、扇子の絵付け体験を催したりしたんだよね。あれはまたやりたいな〜
さきほどのシクロもそうなんですが、本業がありながらの市民活動っていうのは、
ぶっちゃけ大変じゃなかったですか?
いや〜大変とは思わなかったんだよね。
僕の中で仕事と市民活動の線引きがあまりなくて、
どちらも「まちをよくしたい」っていう同じ思いで、根底は変わらないんだ。
さ、さすが頑張りくん…!そんな優等生な回答を…
あとは市民活動を始めたのは、民間の感覚を知りたかったっていうのもあるんだ。
民間の方々の考え方や進め方を知って、市役所の中の常識だけじゃなく
「バランスのとれた人」になりたかったんだよね。
だから、モチベーションの話だけじゃなくて、市民活動は仕事にも良い影響を与えてたんだ。
ほうほう、良い影響とは?
市民活動と仕事のそれぞれで得た知識・経験・人間関係がぐるぐると循環してつながっていったんだ。
よく行政と民間(市民)には大きな壁があるって言われるでしょ?
仕事だけの付き合いだとどうしてもそうやって線を引きたくなっちゃう。
でも市民活動に入るとみんな仲間になれる。
だから僕にとって市民活動は潤滑油なのかもしれないな。
今後はこんなことをやりたい!という野望はありますか?
今いる阿寒湖温泉では僕が市民活動をやってたってこと、
そしてそもそも僕自身のことを知らない人がほとんどだから、ゼロからのスタートなんだ。
まだまだ時間はかかるかもしれないけど「市役所の天内さん」だけじゃないまちとの関わりを作っていければと
模索してるところだよ。
3年前の冬、クスろがまだ発足される前、釧路で何かをやりたい!という漠然とした思いだけを持って市役所に相談に行った際、
「この人なら君たちの話をわかってくれるよ」と紹介してもらったのが天内さんだった。
熱意だけあってやりたいことがあやふやな私たちの話にも耳を傾け、アドバイスをしてくれて、なんて親切な人なんだ!と当時かなり感動した。
でもきっとそれは、誰にでもできることではなく、市民活動家と市役所職員という2つの顔を持った天内さんだからできた技だったのだと今は思う。
「あれもやりたい、これもやりたい、なぜか仕事が忙しくなるとやりたいことが次々と出てきちゃんだよね」と話す天内さんは、
きっとこれからもずっと釧路のまちに必要な頑張りくんなのだろう。
天内さんと出会うには?
阿寒観光振興課
北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉2丁目6−20 阿寒湖まりむ館2階
0154-67-2505(代表)
シクロHP:http://www9.plala.or.jp/cyclo_496/
くしろソーシャルデザインネットワークHP:https://kushiro-sdn.jimdo.com/
釧路ヨウコソプロジェクトFacebookページ:https://www.facebook.com/youkoso946/
天内さんに会える!『ひとめぐりTOUR vol.3』
普段クスろ人のインタビュー記事をご覧の皆様の中には、素敵なクスろ人の方々に実際に会って話してみたいな〜と思った方もいらっしゃるのでは?
そんな方々へ向けて、クスろ人に実際に会いに行ける「ひと」めぐりTOURという1泊2日の旅を開催しています。
天内さんにもまちづくりについて市役所職員と市民活動家の両面からお話しいただく予定です!
ご興味のある方、下記URLで詳細をご確認の上、専用フォームからお申し込みください。
http://kusuro.com/tour_03/
※2017/1/24を参加締切とさせていただきます
湖凍る阿寒湖温泉に行って来ました!
釧路の市民活動の先輩でもある天内さんの経歴を深掘るという貴重な機会になりました。
お昼は天内さん行きつけのお店で、鹿肉や鮭を堪能しました!おいしかった〜
看板娘のおばさまとの微笑ましい絡みを見て、充実した阿寒湖温泉ライフが羨ましくなったのでした〜!