「ひと」めぐり

地道な努力とユーモアでお客さんの心をつかむツルガイド 

kawase01

河瀬幸

阿寒町出身 阿寒町在住

1976年生まれ。釧路市内の高校を卒業後、江別の短大に進学。卒業後は釧路に戻りハウスメーカーに就職。2005年から「阿寒国際ツルセンター グルス」に勤務し、主任解説員を経て2015年から館長を務める。
毎日更新するブログ「タンチョウ&ミキィ」では、タンチョウを始めとするツルセンター周辺で見られる野鳥を写真で紹介し人気を博している。また、撮りためたツルや野鳥の写真集を出版したり、写真展を開催している。
2歳の娘を持つ、仕事も家庭も抜かりのない明るく愉快なパワフルママ。
この記事を書いた人
chiyan

クスろ副代表ちーやん。
しばらく東京で働いてましたが、2016年6月に釧路にUターンしました。普段はクスろのデザイン全般を担当しています。
今回がライター初挑戦。どうぞお手柔らかによろしゅうお願いします。

釧路でイチオシの鳥といえば、間違いなく「タンチョウ」だろう。
日本の特別天然記念物であり、絶滅が危惧され、国内希少野生動植物種にも指定されているタンチョウは、釧路湿原に生息し、冬になると釧路近郊で飛んでいる姿を目にすることも多い。
今回は、タンチョウへの人工給餌発祥の地であり、日本で唯一のタンチョウの研究施設である「阿寒国際ツルセンター グルス」の館長さんが面白い!という噂を聞きつけ、会いに行ってきた。

解説はエンターテイメント

kawase02

chiyan

こんにちは、はじめまして〜!館長さんっていうからおじさんをイメージしてたんですが、小柄でかわいらしい女性の方で驚いてます!
さっそくですが、ツルセンターについて教えていただけますか?

kawase

私はこのツルセンターは「生きた博物館」だと思っているの。
実際にツルを飼育しているので「生体展示」も見れるし、展示室もあるので「博物館展示」も見れるから。

chiyan

生きた博物館ですか!ちなみにツルセンターのオススメの季節っていつになるんですか?

kawase

どの季節とは言いにくいかな。季節ごとの魅力があるんだよね。
夏は飼育している4羽のツル(タンチョウ3羽、マナヅル1羽)がお客さんの近くまで寄ってきてくれることも多いの。
あとは、センターの前庭には「ビオトープ」という元々牧草地だった場所に水をひいて湿原の環境を再現した場所があって、そこの遊歩道や木道では本当にいろいろな野鳥も見れるの。

chiyan

そうなんですか!タンチョウといえば冬のイメージが強いので、冬しか来たことなかったです!(すいません)

※タンチョウは冬期は人里の給餌場で越冬し、夏期は湿原の中に生息している。

kawase

冬は外での給餌があって、タンチョウやキツネや色んな動物が一斉に集まるからね。
カメラを持ったお客さんもずらーってスタンバイするしね。
夏には夏の、冬には冬の良さがあるから、それぞれの季節を楽しんで欲しいな。

kawase03

様々な野鳥に出会える夏のビオトープ(左)、タンチョウをはじめ多くの動物が集まる冬の給餌
chiyan

なるほど…これからは冬に限らず遊びに来ますね!
そうそう、河瀬さんの解説がとんでもなく面白いという噂を聞きつけたのですが。

kawase

そんなハードル上げなくても笑
ただ、解説はエンターテイメントだと思ってるの。
ただ説明して終わるだけじゃなくて、せっかく来てくれたんだからお客様には楽しんで欲しいって思ってるだけなのね。「わかりやすく」「身近な例え」を心がけてるよ。

chiyan

た、たとえば!?

kawase

タンチョウが夫婦で鳴き合う時なんだけどね、例えば縄張り宣言の時なんかに
オスは コー!!
メスは カッカッカッ!!
って鳴くんですよ。

kawase04

タンチョウの鳴き声を実演する演技派の河瀬さん
chiyan

え!いま河瀬さんの声ですか!?
鳴き真似のプロなんですか…人からあんな声が出るなんて…
いやはや、これだけで引き込まれますね。
ちなみにもう一つのポイント「身近な例え」っていうのは?

kawase

うーんそうだな。タンチョウの頭って赤いじゃない?
あれってね、要は「チ○チ○」なんですよ。

chiyan

え!!!チ○チ○!!?

kawase

まぁ、海綿体ってことなんだけど笑
「頭の赤い部分は皮膚で、血流がよくなることによって粒状の皮膚が大きく膨らんで、そして赤い部分が広くなる」っていう説明をするのに一番伝わりやすいの笑

chiyan

なんて話をいきなりするんですか!笑

kawase

「私はわかんないんだけど、みなさんは多分わかると思います。興奮すると充血して大きくなりますよね。それなんです!」ってノリがいい男性のお客さんには付け足しちゃう。
見事にハマると、おぉ!って盛り上がるよ笑

kawase05

実はアレなタンチョウの頭頂部
chiyan

いきなり下ネタでびっくりしましたよ

kawase

つまりはお客様の反応を見ながら、みなさんが喜んでくれそうな話題にしてるの笑
しーんと静まりかえるのが一番怖いからね…私もお客様も双方が楽しいのが一番じゃない?
説明の最後に「これで私のご案内を終わらせていただきます!ありがとうございます!」って言った時に
「わー!」って拍手が起こると、今日も楽しかったな〜って感じるんだよね。

chiyan

下ネタに限らず、河瀬さんの喋りは抑揚もあって飽きないし、いい感じにツッコミどころも用意してあるんですよね。
他に何かお客様への工夫ってありますか?

kawase

「フォトコンテスト」を定期的に開催してます。
これは、ツルの写真をよく撮りにきてくださるお客様は自分のパソコンに写真が入りっぱなしの方がほとんどだと知って、もっと多くの人に見て欲しいと思って始めたんです。
来館者に好きな写真を投票してもらう仕組みで、これがなかなか常連さんから好評なんです。

kawase06

定期的に開催するタンチョウフォトコンテスト

「お前行ってこい」から始まった館長人生 

kawase07

タンチョウを一から教えてくれた獣医さんと
chiyan

ところで、河瀬さんはもともとツルがお好きだったんですか?

kawase

ううん、全然。

chiyan

…え!?

kawase

私は阿寒生まれ阿寒育ちだったから、ツルって身近すぎる存在であまり興味もなかったんだよね。
高校卒業後は養護教諭の資格をとるために家を出て道内の短大に行って、その後戻ってきたんだけど、最初に勤めたのはハウスメーカーだったし。

chiyan

それは意外です。
ハウスメーカーではどんなお仕事をされてたんですか?

kawase

図面書きをしてたよ。すごくいい職場だったんだけど釧路営業所が撤退しちゃって、それに伴い私も退職。
でね、当時、私の親の会社が阿寒丹頂の里道の駅の指定管理を行っていて、私もそこでバイトしていたんだけど、ツルセンターも指定管理を引き受けることが決まって「お前行ってこい」って言われて来たのが始まり。

chiyan

そんな理由だったんですか…!?

kawase

でもね、小さい頃からずっといろいろな動物を飼っていて好きだったから、なんかおもしろそうだなとは思ってたんだ。それに特別天然記念物を間近で観察できるなんてすごいじゃん!って。

chiyan

確かに確かに。当時、苦労したこととかありました?

kawase

そうだな、一般的なツルの生態を覚えてお客様に伝えるんだけど、やっぱりお客様っていろんな質問があるでしょ?
その質問がマニュアルに書いてなかったら全然わかんないの!
「ちょっと待っててください、確認します!」ってお客様を待たせて、当時センターに駐在してた研究員や獣医さん(写真左)に聞いて答えたりして笑
そんな感じで一つ一つ覚えていったな〜

chiyan

ツルについてはそうやって知識を深めていったんですね!
河瀬さんは説明員の他にはどんなことをされてるんですか?

kawase

なんでもやるよ〜イベントの企画もやるし、SNS更新もやるし、新たにセンターのウェブも作ったよ。
気になったら放っておけないの!
やり方がわからなくても、PhotoshopとかIllustratorとかのグラフィックソフトを見よう見まねで使って、自分で作っちゃったりもするしね!
やるからにはちゃんとやりたい。その思いが強いかな。

chiyan

そういえば、今も企画中のイベントがあると伺いましたが

kawase

そうなんです!実は阿寒国際ツルセンターは2016年で20周年を迎えたんです。
そこで、笑顔のピースサイン写真を集めてモザイクアートを作ることにしたんです!
20周年だから2=ピースサインってね。
2/11にはこのアートのお披露目会も予定してるんだよ。だから写真集めるの、手伝って〜!

chiyan

は、はい!喜んで!

kawase08

20周年記念の企画ポスター(左)、ハウスメーカー時代の河瀬さん(右)

日々「生の情報」を発信し続ける

kawase09

chiyan

河瀬さんのブログ「タンチョウ&ミキィ」ですが、始めたきっかけは何だったんでしょう?

kawase

始めたのは2007年で、ブログとかまだあまり流行っていない頃だったんだよね。
常連さんから、タンチョウや雪の状況が知りたいって言われて、携帯で撮った写真をUPしていたの。
そのうち常連さんから使わなくなった一眼レフを安く譲ってもらって写真を始めたんだけど、最初は恥ずかしくて携帯で撮った写真しか使っていなかったんだよね。
そしたら、せっかく一眼レフで撮っているんだからブログにも使いなよって言われて、すっごく下手くそな写真で記事を作っていたのよ。
冬はツルを撮ってたんだけど、シーズンが終わった時にもったいないからって、そのへんにいる鳥を撮り始めたのね。

chiyan

鳥にはもともと詳しかったんですか??

kawase

いや、全然わかんなくて笑
だから撮った鳥を図鑑で調べてブログに載せてったの。それが今につながってるって感じだね。

kawase10

ブログに日々アップされる野鳥の写真
chiyan

調べて!?
先ほどのツルの生体の話もそうですが、河瀬さんってすごくマメに一つずつ調べてらっしゃいますよね。
記事への「こだわり」みたいなものもあるんでしょうか?

kawase

心がけてるのは「生の情報」であること。
毎朝ビオトープを散歩してそこで見かけた鳥をアップするようにしてるよ。

chiyan

毎朝の散歩…やはりマメですね。
ブログについてまわりの反応はどうでした?

kawase

それが最初はなかなか理解されなくて。
「遊びでやってんのか?」みたいな冷たい反応も多くてね〜それに当時はまだブログって身近じゃなかったから、何か書かれるかわからないっていう、漠然とした不安があったんだと思う。
だからもう開き直って、センターのHPからリンクも貼らずに完全に個人のブログで続けることにしたの!
就業時間中には絶対更新しないって決めてね笑

chiyan

否定されても続けてきたんですね

kawase

続けられたのはコメントしてくれる人がいたり、取材してもらえたりしたからかな。
ブログがきっかけで仲良くなった仲間とはよく飲み会したり仕事の愚痴とかも聞いてもらってるよ。
それに20周年記念のモザイクアートも、ブログでもらったコメントが発想のヒントになってたりもするんだよ。

chiyan

今はどうですか?まだ理解されていない感じはありますか?

kawase

ううん、今はお客様から「見てるよ!」とか「役に立つ」とか言ってもらえて。
更には、ツルセンターの入館者アップに私のブログが大きく貢献してるって新聞に書いてもらえたりして。
あれは嬉しかったな〜

kawase11

出版した野鳥の写真集(左)とビオトープで観察できる野鳥をセンター内で紹介している(右)

実は追いかけていた父の背中

kawase12

chiyan

お話を聞いてる限り、すんごい働いてる気がするんですが、河瀬さんはお子さんもいらっしゃるんですよね?

kawase

2014年に生まれた娘がいます。かわいいよ〜余裕がなくて大変な時もあるけどね。
私は出産後5ヶ月で復職したっていうのもあって、両親や主人のサポートのおかげで仕事と育児を両立できてるって感じるよ。

chiyan

もともとはツルセンターがお父様の会社の指定管理を受けてたということで、上司にあたる存在だったと思うのですが、家族間でお仕事の話もするんですか?
※現在、ツルセンターの指定管理は別の会社が受けています

kawase

しょっちゅうするね!
経営者の友達がまわりには多くないから、相談するとしたらまず、父になるかな。
たまに仕事の文句を言ったりもするね。

chiyan

どんなお父様なんですか?

kawase

けっこうシャイな性格で、娘がこういう風に色々してるのを、自らあまり全面に出す人ではないんだよね。
だけどやっぱり気になるみたいで、恒例の朝散歩をしてたらばったりビオトープで会ったことがあってね〜
なんか私がどんなことをやってるのか気になって見に来たみたい笑

chiyan

なんだか微笑ましいエピソードですね〜
お父様と似てるなぁって感じることありますか?

kawase

似てるってわけじゃないんだけど、最近知ったことがあって。
実は、父は中学の時「ツルクラブ」ってクラブの創立メンバーでツルの保護とか学生なりの研究とかやってた人だったの。
そんなこと全然父から聞いたことなかったのに、センターに勤めて色々と資料見てるうちにあれ?って気づいて。
だから今、私がこうしてツルセンターで館長をしてるっていうのは、なるべくしてなったと言うか、つながってるものなんだな〜って感じたね。

chiyan

なんだかそれは運命的なものを感じますね!
お父様は今の河瀬さんをどんな風に感じてらっしゃるんでしょうか?

kawase

若い頃いっぱい苦労かけたし、迷惑かけたし、心配もかけたから(トンデモ恋愛エピソードが多数)、今はこうやって真面目に働いて、結婚して子供も生まれて、本当によかった~って思ってるんじゃないかな。
父と同じ目線で話せることになった今は、父のことを本当に尊敬していて、いい父親のもとに生まれたなって思ってるよ。

kawase13

河瀬さんのお子さんとお父様

最初はなんとなく入ったツルや野鳥の世界。「のめり込んで極めたい」という性格から、今やツルや野鳥の現状を把握している数少ない人となっている。河瀬さんの明るくパワーあふれる姿からは想像できないくらい、一つ一つわからないことを調べ、一人一人の要望に応えていくという、丁寧でコツコツ積み重ねた日々があったことが伝わって来た。
河瀬さんは今日も多くの人に喜んでほしいという思いのもと、ブログでもガイドでもタンチョウや野鳥の魅力を発信し続ける。

河瀬さんと出会うには?
阿寒国際ツルセンター【グルス】
北海道釧路市阿寒町上阿寒23線40番地
0154-66-4011
9:00~17:00 / 年中無休
HP:http://aiccgrus.wixsite.com/aiccgrus/center
ブログ「タンチョウ&ミキィ」:http://blogs.yahoo.co.jp/aicc_grus
<河瀬さんにガイドをお願いできます!>
予約が入ってなければ個人のお客様でもガイドをお願いすることができます。
あらかじめお電話にてお伝えいただくとスムーズです。

河瀬さんに会える!『ひとめぐりTOUR vol.3』
普段クスろ人のインタビュー記事をご覧の皆様の中には、そんな素敵なクスろ人の方々に実際に会って話してみたいな〜と思った方もいらっしゃるのでは?
そんな方々へ向けて、クスろ人に実際に会いに行ける「ひと」めぐりTOURという1泊2日の旅を開催しています。
河瀬さんにも愉快に軽快にタンチョウガイドをしていただく予定です!
ご興味のある方、下記URLで詳細をご確認の上、専用フォームからお申し込みください。
http://kusuro.com/tour_03/

ちーやんの編集後記
chiyan釧路にUターン早々、ツルセンターにお伺いしました!ツルの話もさることながら、河瀬さんのトンデモ恋愛話に花が咲き、脱線しまくりのめちゃくちゃ盛り上がったインタビュー。それがビオトープでの撮影では一変、野鳥を見つけた時の真剣な眼差しには、思わずそのギャップで惚れてしまいそうになったのでした〜
さて、今回「ひとめぐり」の形式をこれまでと少し変えてみましたが、いかがだったでしょうか?これからも試行錯誤しながら進めていきたいと思います〜!
このエントリーをはてなブックマークに追加