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兄:石川栄一 (左)

弟:石川武司 (右)

阿寒湖温泉生まれ、阿寒湖温泉在住

栄一さん
1978年生まれ。
高校卒業後、東京の菓子専門学校に進学・就職。
Uターン後は店内に足湯を持つユニークなカフェ「温泉工房あかん」を開業。
栄一さん手作りのお菓子だけでなく、奥さんや叔母さんの加入により軽食も充実している。2児の父。

武司さん
1980年生まれ。高校卒業後、広島の鉄工所や釧路市内の設備会社等に勤務。
Uターン後は家業である「(有)北海まりも製菓」(以下「北海まりも」)にて、ご家族とともにまりものお菓子を製造・出荷している。
昨年・阿寒湖畔スキー場レストハウス内に「たけし食堂」を開業。1児の父。

阿寒国立公園に内在し、雌阿寒・雄阿寒岳に囲まれたおだやかな阿寒湖を望む、阿寒湖温泉地区。
道内最大のアイヌコタン(アイヌ集落)が 整備され、 木彫りなどの民芸品店や観光ホテルが立ち並ぶ温泉街の中で、彼らは日々楽しく暮らしている。

ザリガニは食べちゃおう

阿寒湖では、在来種である「ニホンザリガニ」や天然記念物の「マリモ」が、野性化した「ウチダザリガニ」という特定外来生物に食べられてしまい、生態系に悪影響を及ぼしている。その状況を逆手にとって、シンプルにも「食べちゃおう」と思いついたのがこのブラザーズ。
兄の栄一さんのカフェで提供されるのは、ザリガニのカルボナーラ「ザリボナーラ」。
そして弟の武司さんが営む「たけし食堂」で提供されるのが「ザリガニスープカレー」。
2人が編み出したこのユニークな「ザリガニ料理」について詳しく聞いてみようと思う。

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ザリボナーラ(左)とザリガニスープカレー(右)

ー ザリボナーラはどうやって出来たんですか?

武司さん(以下、武):俺カルボナーラが好きなんだ。で、「カルボナーラ」と「ザリボナーラ」ってなんか似てるしゴロ良いな…あれ?これ、いいな!ってね。そこから笑。俺は店を持っていないから兄貴の店で出そうと提案したの。

栄一さん(以下、栄):今だから言うけどね。うちのカフェがまだ俺1人だけ体制の時だったんで、「待ってくれ、嫁さんが加入してからにしてくれ」って頼んだんだけど武司聞かなくて。
レシピを作った武司は自分が店で調理すると言ったのに、電話に出ないは、遊びに行ってるはで結局俺が作ることになったんだよね笑。

武:1週間くらいしたら、兄貴から「もう俺出来るから武司来なくていいよ」って言われたもん笑。

ー ザリガニスープカレー」も武司さんが開発されたんですよね?

武:そうそう。「たけし食堂」のメインメニューとして出したの。ザリボナーラと違って、殻を剥かなくてもいいのが良いんだ。

ー 「たけし食堂」はどんなお店なんですか?

武:仕事の合間にゲレンデに行きたいからという理由で始めた、趣味みたいなお店。
土鍋スープカレー・手打ちそばなんかを出す食堂だよ。結果、嬉しい誤算で売上は上々。
仕込みが忙しくてなかなかゲレンデには思うようには行けないんだよね笑

ー お2人はザリガニ問題の解決策として開発に取りかかった訳ではないのですね?

栄:そう。阿寒湖では、ザリガニ駆除はなかなか進んでいないのが現状。
国から漁組の方には駆除のお金は入ってこないんで、漁組も無理してやれないんだよね。
だからたくさん消費したくても難しい。邪魔者と言ってもまだまだ今は高級食材なんだよね。

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冬の間だけゲレンデにオープンするたけし食堂
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豪快に殻付きで出てくるスープカレー
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武司さんはインストラクターの免許も持つ程の腕前

「家業の後継者」があっさりと長男から次男へ

「ザリガニ料理人」の顔は側面であり、実は羊羹屋のご子息であるお2人。
石川さん兄弟のご実家は、阿寒湖温泉土産でこれを知らない人は北海道に居ないと言える程、昔から愛され続けている「まりも羊羹」の製造会社。菓子職人の兄と機械操作が得意な弟が、お互いの個性を認め合い、ともに家業を支えている。

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仕込み中の栄一さん(左)と北海まりものみなさん(右)

ー 武司さんは家業である北海まりもを継ぐ予定だったんですか?

武:まさか羊羹屋やると思わなかったな。この会社は兄貴が継いで、俺は別の仕事で生計を立てると思ってたんだよ。それで兄貴は東京に修行に行っていたしね。

ー 栄一さんは今は別で「カフェ」を経営されていますよね?

栄:先に武司が北海まりもに居た所に、俺が東京の修行から帰って来たんで結構きつかったんだよ〜。
当時経営上、俺1人増やす余裕は無かったんで、母さんから「あんたが出ていきなさい」と言われたんだよね。
え?俺か?俺なのか?ってなったよね笑。

武:ははは笑 だけど、兄貴は手でお菓子を作る「職人」だから、機械で製造する北海まりもはちょっと違ったんだよね。
俺は逆に工業高校の機械科出身だったからこの会社には合っていたのさ。台所は裏でつながってるし、兄貴の店は北海まりもの直売店でもあるから。
兄貴の知識を活かして新商品「まりもプリン」もできたしね。

ー いつも商品開発も一緒にやるんですか?

栄:いや、それは武司に任してるよ。
武:材料の配合だとか、入れるタイミングや方法は相談することはあるかな。
栄:武司は頭が柔らかいから、俺が色々と言うよりも、武司がやりたいことに対して「こうしたらいいんじゃない?」の方がうまくいくんだよね。

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栄一さんの経営する足湯カフェ「温泉工房あかん」。店内には北海まりものお菓子や栄一さんの作ったスイーツなどが並ぶ

自分が好きなことをする、みんなにも好きなことをしてもらう

趣味や個性は違っていても2人に共通することがあった。
それは、輪の中心で笑っている2人の笑顔が何度もイメージ出来たこと。
自分が好きなものを通して、楽しみながらこのまちで遊び、暮らしを作る。そんな2人に人は自然と集まって来てしまうのだろう。

ー お二人はUターンですが、地元に戻って来てからとその前との違いは何だと思いますか?

武:今は好きなことをしていて、気の合う仲間と自分らしくいられているから楽しいな。
栄:俺も。東京に居た頃は仕事の休みもほぼ無かったからね。

ー このまちで暮らすのに大事にしていることはありますか?

栄:仲間を大切にすること。ここって狭いまちだから喧嘩したら周りに迷惑をかけるし、すぐ広まるしね。
武:やっぱ仲間ができると楽しいよね。集まるべって言ったら5分で集合だし。
栄:転勤して来た人にも店に来て話をしてくれたりすると、好きなものを聞いて、同じ趣味の人たちが集まる場所に繋いであげることはよくあるよ。
景気が悪くなっていく中で、これからは「横の繋がり」で人が繋がっていくはずだからさ。

取材中のカフェにて、2時間ほどの間に何人かの人が彼らにコンタクトした。
クリーニング屋の場所を聞きに入って来る近所のおばあちゃん。
地元のお祭りの打ち合わせの電話。お祭りに大道芸人さんが来るよという噂話。明日のケーキを注文しに来店する常連のおじさん。
なんて開放的で地域に根付いた店なんだろう。
このコミュニティが普通じゃないのは、この2人が「地域の人たちと調和する」ことを大切にし、このまちに感謝しながら暮らしているからなのだと思う。

ザリガニ料理ブラザーズに出会うには?
・温泉工房あかん(栄一さんのカフェ)
 釧路市阿寒町阿寒湖温泉1丁目4−29
 0154−67−2847
・北海まりも製菓(武司さんの製菓店)
 釧路市阿寒町阿寒湖温泉2丁目4−10
 0154−67−2927
 http://marimo-youkan.com/index.html

ぼりの編集後記
boriザリボナーラ&ザリガニスープカレーを食す!
濃厚なチーズのソースに平打ちの生麺がからみ、本当美味しい!
剥かれたザリガニの見た目もエビのようになっていてすんなりといただけました。
変わってこちら、ザリガニスープカレーは丸ごとザリガニがゴロリ!
見応えのある構図ですが、なかなか良いおダシが出てカレーにコクを生んでおりました。
武司さん、第3弾「ザリガニ料理」期待してますよ〜