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請川賢彦

釧路市出身 釧路市在住

二児の父。市内に自宅兼店舗を構える。
釧路の高校を卒業後、釧路市内、札幌、千葉、とパン屋さんで現場の修行を続けた。
その後再び釧路市内のパン屋さんに戻り、開業準備の間お世話になりながらも、2012年に地元釧路市にて 「HATCH BAKERY(ハッチベーカリー)」を開業。
奥様と10名近くのスタッフの方々と共に、日々美味しいパンを焼いている。

ブー、ブー、とオーブンから音がする。早朝4時頃から既に朝の仕事は始まっていた。
取材にお邪魔したのは午前6時。 工房はもう焼きたての香ばしいパンのにおいと真剣なスタッフさんの熱気で溢れている。
7時オープンに向けて多種多様なパンがどんどん並ぶのが目で見ても楽しい。
ハッチベーカリーは外観も店内も落ち着いた木の色合いや照明がおしゃれで、パンのディスプレイにも高いセンスを感じる。
お客様の出入りはいつも激しく、女性客だけでなくサラリーマンの1人客が多いのが特に印象的で、多くの客層に好まれているお店なのがわかる。

目指すのはいつも焼きたてに出会える店

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店内に入るとスタッフの方の「◯◯パン焼きたてです」という声が途切れないのがハッチベーカリーの特徴。
次から次へと出て来るので迷って決められないお客様も多い。

ー 焼きたてを提供するのにはどんな思いがあるんですか?

色んな種類の焼きたてを提供していくと、どんなお客様でも好みの焼きたてパンに出会えるからね。
他のパン屋さんが朝1回で焼き切っちゃうものを、朝昼夕3回に分けて焼きたてを出すんだ。
焼きたてがやっぱり美味しいのでそれをお客様にも楽しんでもらいたい。

ー それはお客様にとって嬉しいですね。ただ、とても手間じゃないですか?

そうだね。常にたくさんのパンがあると、焼きたてじゃなくなるので他のお店との差別化は図れない。
ただ焼きたてを追い求めると一度に多くは焼いておけないので欲しいパンが並んでないっていつも言われてるんだけど笑。
今ある課題はそのバランスかな。まだまだですね。

ハッチベーカリーには釧路にはあまり馴染みのハード系、色鮮やかな旬のフルーツをの せたデニッシュやブリオッシュなどのデザート系、ベーグルやピザやサンドイッチなどの総菜系、とバラエティに飛んだ種類のパンが並ぶ。

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ー 新しいパンをお店に出す時に気をつけていることはありますか?

1回だけ出してみようかではなく、どうせやるなら定番化できるパンを出すということは決めている。
だからすごく多くの種類を出しているように見えるかもしれないけど、簡単には種類を増やさないようにしているよ。
普段から使えない材料であまりやりたくないから、「今だけ限定」のものや高額なものは出来るだけやらない。
お客様が気に入ったらいつでも買い続けられるようにね。

ー ハッチベーカリーさんはあまり広告を出されていませんよね?

そうだね、うちのお客様のほとんどが口コミで来てくれてる。自分が食べて美味しかったから誰かに伝えたいっていう自然な口コミはすごく嬉しい。
自分で袋を分けてお友達にあげようってショップカード入れて紹介してくれるのはありがたいし、色んな所で話してくれてるんだなって感じることはよくあるよ。

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たくさんの種類のパンがいつも並んでいる
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ハード系のパンも人気が高い
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季節のフルーツを使ったデニッシュは見た目も華やか

子どもの頃からの夢は「パン屋さん」

釧路で2年修行した後、札幌2年、千葉9年と高いレベルの現場での実績を積んだ請川さん。
これまで積み重ねてきた技術を活かし、釧路の人に美味しいパンを食べて欲しいという素朴な想いがあるからこそ、自然体で素敵なものを提供できるのだろう。

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ー パン屋さんへの興味はいつ湧いたんですか?

小学校の時の「将来の夢」に「パン屋さん」って書いてたんだよね。だから有言実行なの笑。
実は高校出て就職する時まで忘れていたんだけど、そういえばって昔の夢を思い出した時にやっぱりパン屋さんをやりたいなと思ってこの道に進んだんだ。

ー パンのどういうところが好きですか?

実家がパン食だったわけじゃないけど、パンは昔から好きだったよ。
パン屋さんはお菓子屋さんと違ってしょっぱいものも食べれるから好きだね。

ー 釧路に帰って来るのは決まってたんですか?

開業時期は決めていなかったけど、いつかは地元に帰りたいという思いはあったよ。
高校卒業して一番始めにパン屋の修行をさせていただいた釧路市内のパン屋さんに再び戻って来たのは開業準備のため。
千葉県では9年勤めていて、そろそろ年長者になって来たので独立する頃だと思ってね。
釧路は商売をしていくにはちょうどいい規模のまちだと思ったんだ。

ー 物件探しはどのようにされたんですか?

親戚のおじさんから何も使っていなかった土地を譲ってもらったんだ。
当初から数件目星をつけていたうちの一つではあったんだよね。
テナント借りて、というのも考えたんだけど、人や車の通りが多いこの場所が一番良い立地だなと最終的に決めたんだ。

ー お店の外観もトータルに作り込まれているにパン屋さんはなかなか多くないですよね。

おいしいパンだけを作るだけでも売れるわけじゃない。
やるからには建物、インテリア、ディスプレイ、制服…全部納得いくようにやりたかったんだよね。
ずっとパン屋さんで働いて来た経験で、あのお店のここがいいとかやりたいことを組み合わせた結果こういう店になったんだよ。

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アクセントカラーの赤が目を惹くハッチベーカリーの外観

パンづくりはチームワーク

焼きたての美味しいパンを種類多く提供するためには?
その答えはシンプルにも「明るいチームプレー」であった。
請川さんのやりたいことを理解して、スタッフの方も良い緊張感の中で笑い合い、声を掛け合い、個々人がやるべき役割を果たしていた。

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ー 現在、スタッフさんは何人ですか?

全員で10人くらい。高校生、大学生もいる。販売と調理とか個々人に特別セクションは決めていないんだ。
みんな販売もするし、工房の作業もするよ。

ー 新人さんに伝える心構えはなんですか?

まずは「元気に仕事をすること」。そして大事なのは「チームワーク」。
早朝から7時オープンまでの間にパンを並べなくてはならないから、1人だけ違うことをやっていくと違うものが出来てしまう。
パン屋さんの仕事は共同作業だということを理解して下さい、と必ず初めに伝えるよ。

ー スタッフの皆さんに対する思いは?

自分1人で出来る作業は限界があるので、パンの作れる種類が限られてしまうんだよね。
だけどうちは沢山の種類を焼きたてで出したいっていう考えだから人手がいる。
理想のパン屋さんにするにはスタッフの助けは不可欠なので、みんなのことは本当に大切。
だからオフの時間でもご飯や飲み会なんかのコミュニケーションをとる。
これまで修行したどのお店もチームワークでやって来たので、自分もそうありたいと思っているよ。

ー 職場の雰囲気で大事にしていることはありますか?

職場内は和気あいあいとやること。だから雑談はOKにしている。朝から晩までみんな一緒にやるからね。
真剣に無言でやる時もあるけど、向き合って仕事をする時もあるし、何人か合同でやる時もあるから、そういう時は恋愛の話なんかも聞きますけど笑。
店主自ら喋るようにして、和やかで話しやすい状況にしようとは心がけてるよ。

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それぞれの役割分担をしっかりとこなす様子(左)と閉店後の談笑の様子(右)

積み上げて来たものを出す

請川さんのお仕事への姿勢は、パン作りにしてもチーム作りにしても一過性を追うようなものではない。また、センスに頼るようなものでもない。
それは、丁寧に、かつ長く続くようにこれまで積み重ねて来た技術を出し切る姿勢だった。

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ー お仕事への姿勢で大事にしていることはなんですか?

自分は現場上がりっていうか、ずっと華やかじゃない場で仕事してきて、積み上げて来たものを出しているだけなんだ。
だから、あまり褒められて浮かれるということはないよ。

ー 反対に気をつけていることはなんですか?

パッと始めてパッと派手にやろういうのはない。
自分のパンを食ってくれ、ドン!という自己満足的なものは店に出さないように気をつけているよ。
きちんとお客様に喜んで貰えるもので、なおかつ自分がやりたいものをと考えている。

請川さんはどんな方ですかとスタッフの方に問うと、
「他の店では絶対しないような会話が出来る人。くだらないゲームの話をしても笑ってくれる楽しい上司」との声。
「出来るだけ多くの種類のパンで、出来るだけ焼きたてを提供すること」を目指すお店の形が確立されていて、
その実現のために着実にこれまでやって来たことをやり続ける。
チームワークを重んじ、スタッフを大切にする。
請川さん達の作り出す和やかなお店の雰囲気が、お店に並ぶパンの顔にも出ているようだった。

請川さんと出会うには?
ハッチベーカリー:釧路市文苑1-9-3
電話:0154-65-5185
Facebook:https://www.facebook.com/HatchBakery

ぼりの編集後記
boriハッチベーカリーのパンをいただきました!
ドライフルーツやシード・ナッツなどを使用した種類豊富なハード系のパンは噛めば噛む程味わい深く、小麦の香りがします。豊富な種類のパンに魅了され、私はいつもハード系もデザート系も総菜系もまんべんなく買ってしまいます!
ひとつひとつのパンがかわいい雑貨やオブジェのようにディスプレイされていて心がときめき、わくわくします。
ぜひ請川さんたちが作り出す、心躍るハッチベーカリーの世界に触れてみて下さい!