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浪岡健一

釧路市出身 釧路市在住

1949年生まれ。釧路市内を中心に営業する「まりも交通」のタクシー運転手として活躍中。趣味までもがドライブ。
休日には道東各地の観光地やお祭りを片道4時間かかっても平気で日帰りで回るほどの運転好き。

JR釧路駅から車で20分ほどの桜ヶ丘地区は、日本で唯一坑内掘りの炭鉱がある地域で、古くから炭鉱に関わる仕事の人が多い。
ここ桜ヶ丘のスーパーマーケットの駐車場には、いつも数台のタクシーが停まっている。
屋根には「まりも」の形をした行灯。道東地域ならではのタクシー会社だ。
今回はそんな「まりも交通」のタクシー運転手、浪岡健一さんにお話を伺う。

浪岡さんのおすすめスポットは※で番号をつけ、記事末尾に地図と一緒にご紹介しています!ぜひ最後までご覧ください。

お客様の荷物は玄関先まで

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この桜ヶ丘地区は、釧路市の東端に位置しており、少子高齢化が進んでいる地域である。
浪岡さんは、地元住民の足として、お年寄りにとっては息子のような存在として慕われている。

ー 浪岡さんのタクシーには、どんなお客さんが多いんですか?

この辺(桜ヶ丘周辺)に住む方々が多いなあ。特におばあちゃんだね。
買い物とか病院に行く時に使ってくれるのさ。
そういうお客さんは、指名や予約をしてくれる常連さんがほとんどだね。

ー 車内では、どんなお話をするんですか?

おばあちゃんには、家族のように話を聞いてあげるんだよね。俺自身も、人と話すのが好きだからなぁ。
子供や孫が釧路を離れているお客さんが、特に喜んでくれてるみたいだよね。

ー 浪岡さんのこと、息子のように感じてるんでしょうね

そうかもしんないねぇ。特に意識しているわけではないけど、気づくと自分の親のように接しているんだよね。
あと、玄関まで荷物を持って行ってあげると、すごく喜んでくれるなぁ。
俺は、普通のことだと思っているんだけどね。

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まりも交通のシンボル「まりも」の行灯(左)、乗車するとお客さんの様子を見て話し始める(右)

休みの日も早朝からドライブへ

とにかく車の運転が大好きだという浪岡さん。仕事もプライベートも運転を楽しんでいるそうだ。

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ー そもそも、どうしてタクシー運転手になろうと思ったんですか?

高校を出てから、板前とか納豆屋とかやってから、しばらく工事現場のトラック運転手をやってたのさ。
でも、工事現場のトラックは、冬季には仕事が減っちゃうからさ。
もともと運転が好きだったから、タクシーをやってみようかなって思ってさ。

ー 毎日忙しいんじゃないですか?

勤務時間は、朝7時から深夜1時頃までだよ。
1日仕事・1日休み・1日仕事・2日休みの5日サイクルで勤務してるよ。
同じサイクルで勤務なので、先まで休みの計画を立てやすいんだ。これがタクシー運転手のいいところだなぁ。

ー 休みの日は、どんな風に過ごしてるんですか?

お祭が大好きだから、イベントがあると車で出かけちゃうんだよね。いつも朝6時出発で、日帰りで笑
厚岸の牡蠣祭り1、尾岱沼のしまえび祭り※2、東藻琴の桜まつり※3、遠いところだと層雲峡※4までいったよ。
人のたくさんいる賑やかなところで、牡蠣とかしまえびとか食べると、すごく美味いんだ。
あと、東藻琴の芝桜の景色が好きでね。昨年は1シーズンに3回行ったよ。

ー ドライブの行き先は、どうやって決めるんですか?

毎日ラジオを聞いてるからさ、イベント情報があるとチェックするんだ。
あとは仕事仲間から教えてもらうこともあるし、麻雀仲間からも教えてもらうよ。

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名物の「北海しまえび」を堪能できる尾岱沼のえびまつり(左)、一面にピンク色の芝桜が広がる東藻琴の桜まつり(右)

お客様それぞれに合った旅の提案を

釧路に来た観光のお客様へは、プライベートのドライブ経験を活かして、観光スポットをお勧めするという。

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ー 釧路に観光に来るお客さんは、どんな方が乗るんですか?

本州から来る年配夫婦の旅行者が多いかな。
そういうお客さんは、丁寧で、感じがいい方が多いんだよ。

ー おすすめの場所を案内することもあるんですか?

もちろん。言われた場所に行くだけじゃ商売にならないからね。
阿寒湖※5に行く人には、摩周※6・屈斜路※7や湿原展望台経由※8を勧めるよ。
プラス1時間ほどで行けちゃうし、どれも釧路にしかない雄大な自然を感じられる景色だから、けっこう好評なんだよ。
あと、車いすの方には、湿原展望台をおすすめするね。中に資料館があるし、バリアフリーの散策路もあるからね。

ー 釧路市内の観光案内は、ばっちりですね

湿原展望台をおすすめしてあげたお客さんから、翌々日に予約が入って、網走まで送ったこともあったよ。
そのときは、屈斜路湖畔の和琴半島※9や美幌峠※10に寄り道していったよ。
あのときは天気が良くて、いい眺めだったなぁ。

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歴史を学ぶのに最適な釧路湿原展望台(左)、晴れた日には深いブルーが冴える摩周湖(右)

車内の会話の中でも、旅を楽しんでほしい

浪岡さんがお客さんと楽しい旅の時間を過ごすために大切にしていること、目指すタクシー運転手像はどのようなものだろう。

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ー 浪岡さんは、どんなタクシー運転手を目指しているんですか?

まず、安全第一でしょ。事故なく安全にお客さんを送り届けるのが、俺の仕事だもんね。
あと、目的地に着いてお客さんが降りるときには、必ず「気をつけてくださいね」と言う。特に釧路は氷が危ない冬かなぁ。
若い人でも、転んじゃうことあるからね。自分のタクシーのせいで、お客さんに嫌な思いをさせたくないからね。
もうひとつは、やっぱりお客さんとの会話かな。

ー お客様との会話を大切にしているんですね

俺は、とにかく人と話すのが好きだからさぁ。
地元の麻雀仲間とわいわいするのも好きだし、休みの日に銭湯に行くと隣に入ってたじいちゃんと「どーも」なんて話してるうちに
仲良くなったりするんだよね。
だけど、 初めてのお客さんの時には、とっても緊張するんだよね。
ほら、タクシーのお客さんの中には、寝たり本読んでいたい人もいるっしょ?
最初は、天気とか何気ない話をして、お客さんの反応を伺ってみるんだよね。
でも、最初は無口だと思ってたお客さんも、実は話が好きなお客さんもいてね、海沿いを走った時にふと釣りの話が始まったりするのさ。
そういう意外な展開があると、すっごくおもしろいよ。

ー 昔からお話が好きだったんですか?

人と話すのは、昔から好きだったよ。でも今と違って若い頃はやんちゃだったよ。
自分の意見を強く言ってしまうことが多かったかな。そのせいで、人と喧嘩しちゃうこともよくあったね笑
でも、いっぱい痛い目を見てきて、だんだんと丸くなったな。
小さい街だからさ、人とぶつかるのを避けるようになってきて、周りの人間や友達を大事にするようになったんだろうなぁ。

ー タクシー運転手の仕事の面白さってどんなところですか?

お客さんと話をしていると、時間があっという間に過ぎちゃうんだ。
話に夢中で、目的地を通り過ぎたこともあったかな笑
お客さんから「もう着いたの?」って言われると、とっても嬉しいなぁ。
だから、これからも会話の中でも、お客さんに旅を楽しんでもらいたいって思うよ。
でも、一番は自分が楽しみたいのかもしんないねぇ笑

帰り際、ちょうど浪岡さんのお客さんとすれ違った。
ずっと浪岡さんのタクシーを利用しているという彼女は、以前腰を痛め、病院へ行くのに浪岡さんのタクシーを呼んだときのことを教えてくれた。
病院までの道すがら、浪岡さん自身が腰を痛めた時エピソードを話してくれ、気が紛れたのだという。
今回のインタビューの最中も、浪岡さんはじっと黙り込むことがなく、少し考える時でも「うーんと」とつぶやきながら、テンポよく答えてくれる。
どんな時でも、浪岡さんは相手の状況を素早く察知し、求められるものをそっと差し出す。そのさり気ない気遣いが、旅をより一層彩るのだろう。
浪岡さんのタクシーは、お客さんの笑顔とともに今日も道東の道を走り続ける。

浪岡さんのおすすめスポット
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※1 厚岸牡蠣祭り http://www.akkeshi-town.jp/kanko/event/5/
※2 尾岱沼えび祭り http://betsukai-kanko.jp/ebimatsuri/
※3 東藻琴桜まつり http://www.shibazakura.net/
※4 層雲峡 http://www.sounkyo.net/
※5 阿寒湖 http://www.lake-akan.com/
※6 摩周湖 http://www.masyuko.or.jp/pc/sightseeing/masyuko.html
※7 屈斜路湖 http://www.masyuko.or.jp/pc/sightseeing/kussharoko.html
※8 釧路湿原展望台 http://www.kushiro-kankou.or.jp/tenboudai/
※9 和琴半島 http://www.masyuko.or.jp/pc/sightseeing/wakoto.html
※10 美幌峠 http://www.town.bihoro.hokkaido.jp/docs/2014031300013/

魅力がつまった素敵な場所ばかり、みなさんぜひ浪岡さんのタクシーで巡ってみてはいかがでしょうか!

浪岡さんと出会うには?
まりも交通にてご指名ください!
0120-489-818

このたび「ひとめぐり」に新しくライターが加わりました!
こんにちは、今回ライター初参戦のピロです。
出身は新潟県で、東北でアグレッシブな学生時代を過ごした後、社会人2年目となる昨年4月から釧路に住んでいます。本業は、クスろ港ではなく、釧路港で港を作ったり、見学に来た方を案内する仕事をしています。
趣味は旅行と鉄道で、釧路ではご当地スポーツ・アイスホッケーを始めました!これまた寒いけど楽しい!
そしてぼりさんのラーメン店に足しげく通っていたところ、いつの間にかライターになっていました笑
これからも魅力的な釧路の人たちに会えることを、楽しみにしています!


ピロの編集後記
“piro”取材後、浪さんおすすめの湿原展望台に行ってきました~。
木道を歩いて展望台まで着くと、眼下に広がる釧路湿原の大パノラマ。
展示室には、湿原のなりたちや住んでいる動植物などを学べます。
浪さんが、おすすめするのもうなずけました~。
釧路のいいところ、浪さんにもっともっと教えてもらおーっと!