「ひと」めぐり

海とお祭りとまちを愛する名物漁師さん

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長崎進悟

厚岸町床潭(とこたん)生まれ
厚岸町床潭在住

1950年生まれ
通年、昆布やニシンなどの「沿岸漁業」を行い、夏は地元の夏祭りを盛り上げる。
気前の良い奥さん、釧路・厚岸に住む4人のお子さん、16人のお孫さんとにぎやかな家族やご近所の仲間に囲まれ、日々わいわいと元気に過ごしている。

海沿いはカキ・アサリ・昆布を中心にした漁業地域、内陸は酪農や林業地域を保有する人口1万人ほどの厚岸町。その中で、釧路から1時間半弱で辿り着く、厚岸湾に面した小さな漁業集落「床潭(とこたん)」が長崎さんが住む自慢のまちだ。
昆布漁に出た朝のこと。「今日はただ取材に来ただけでは帰さねえぞー」と企み笑顔。
ねじり鉢巻きに胴長、海の男らしい出で立ちで出迎えてくれた。
なるほど、来訪者の私には「昆布干しのお手伝い」という任務が待っているようだ。

生まれ変わっても「漁師」になる

漁師の家系に生まれ育ち、職業は「漁師」以外に考えたことがないという長崎さん。
中学の頃から半分以上は学校へは行かず漁船に乗っていた。
青年期にはそれまで無かったさんま漁が床潭で出来るよう地域の漁業に貢献したり、出稼ぎ先で捕ってきた魚を近所に振る舞ったりと、地元漁師さん達との繋がりも深く、信頼も厚い。

ー 長崎さんは、どんな漁をしているんですか?

俺がやってる沿岸漁業っていうのは、日帰り出来るくらいの陸から近い沿岸で出来る漁のことなんだ。昆布は1人が船に乗って海さ出て、返って来たら今度は丘(陸)で干したり、等級選別する作業があるんだ。他には、海を通る魚の頭を網に入り込ませる「刺し網漁」とか、針を海に投じて引き上げる「イカ釣り漁」とかいろいろだな。

ー 海では常に命の危険がありますよね?落ちたことあります?

海からは絶対落ちないな。落ちたら終わりだからな。実は・・・俺、泳げないんだ。

ー え?泳げないんですか?笑

せいぜい泳いでも10m。船からぶら下がってることは何回もあるけどそれでも一度も落ちないで助かってるな。
あと危険だったことといえば、居眠り運転だな。3回は丘にぶつかって船に穴ぼこ作って来たもんだ。

ー そんな危険な目にあっても、漁師がいいんですか?

仕事さえ覚えてしまえばこんなに面白いものは他にないと思う。
やっぱり50年もやってきたこの海が好きだから、船乗ってる時は面白いな。生まれ変わっても漁師になるな。
海の仕事は何時でも起きて行く。まあ、丘の仕事は嫌いだけどな。

長崎さんの年間の漁スケジュール

太鼓の音を聴けば、体が勝手に動き出す

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創建200年を超える厚岸神社と、創建130年を超える真龍神社の例大祭が始まりといわれている『厚岸夏祭り』。 太鼓の音に乗せて華やかな衣装を着た踊り子達が列をなして踊る、地元床潭の名物踊り「床潭八木節」。
長崎さんは踊り子達とまちを練り歩く山車に12年間上がり続け、ファンが出来る程の「名物おじさん」となっている。

ー 床潭八木節ってどのお祭りで見られますか?

今は、厚岸町が主宰する「厚岸夏祭り」(町内の各地域がそれぞれ地元伝統の獅子舞や踊りを披露する祭り)で踊っているな。

ー 長崎さんトラックに乗ってますよね? そこにあがるようになったキッカケは?

山車だな。俺らは「ヤマ」って呼んでる。12年前、自分も祭りを盛り上げようと、ヤマに俺が上がり出したの。それからは乗ってくれってわざわざお客さんたちから電話くるんだ。

ー ファンも居て、大人気じゃないですか。止めたくても止められないですね。

「ヤマの上で踊ってるお父さん素敵だもね〜」とか「サインちょうだい」なんて家族は言われるみたい。
実は何年か前に病気を患って家族からは止められていたんだけどな。だけど、それでもまあ一番は俺が好きだからよ。
死んだらお祭りの太鼓で送ってくれと家族に頼んでるくらい。

家族ぐるみで楽しむ、「人が集まる家」

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長崎さんの周りには自然と家族や仲間達とのコミュニティが出来ている。
人の上に立つのは苦手。だけど「お前が居ればなんだか楽しい」と仲間たちに言われてきた。

ー 床潭に来る人との交流についてお話ください!観光客の人達と話しますか?

旅の人をひっかけたことはよくあったな。
その辺でもちゃらもちゃらしてるからよ、何してんのよって声かけるのよ。

ー 軽く声をかけて、そのまま家に連れてくる人がたくさんいたんですね?

岸壁で魚釣りをしてた人を連れて来たことや、公園で知り合ったばかりの人と大宴会したこともあったな。
息子達の中学校の英語の先生や外人さん、校長先生や教頭先生もいたな。
帯広の大学から来た若者もいたな。

ー 家に連れてきてからは?

家族みんなで来た人とわいわいやるんだ。外国人には振り袖着せたりな。
他には、うちのばば(奥さん)のうまい飯食わしてやるんだ。ちらしずしやお膳作ったり、鍋炊いたりな。
うちの昆布でダシとったラーメンも大人気なんだぞ。
1回声かけたらそれから何十年も付き合いがあるんだ。

決して、自己主張したり前に出る性格ではない長崎さん。
「自分が好きなことをやり、気の合う仲間や家族と楽しく過ごすこと」
これこそが長崎さんから出る「優しさ」や小さなことを気にしない「器の大きさ」の理由なのだと思います。
嫌なことや辛いことがあってもそれはそれ。楽しく笑っていられるように。
そんな長崎さんの笑顔を見ていると、悩み事なんてどうでも良くなってくるのです。

奥さんと丘での作業

奥さんと丘での作業
昆布の切れ端は網に入れて海に戻す

干さなかった昆布の切れ端は網に入れて海に戻す
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ボウルに大量に入ったイクラで朝からイクラご飯
お客さんが来るとこれがごちそうに変わる

長崎さんと出会うには?
床潭の海辺でもちゃらもちゃらするか、クスロ港管理人のクスろまでご連絡ください。
info@kusuro.com

ぼりの編集後記
bori取材をするにあたって昆布干してきました!
4時間の昆布干し部分のみの作業でしたが、作業直後からの筋肉痛は4日間消えず!
これを船が連日出るときは、毎日夜まで作業とのことで。
大変な手間がかかって食卓に並んでいるのだな〜とありがたみを感じた一日でした。
すごいな〜漁師さん!!!
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